なをし屋は着物のお手入れ全般を行う店ですが、お客さんや業界の人に悉皆屋(しっかいや)さんと呼ばれることがあります。

この悉皆屋という名称、着物を持っている・知っている方であれば聞いたことがある方も多い名称かと思うのですが、着物のお手入れをしているお店とこの悉皆屋の違いについて本当の意味での違いを知っている方は、意外と少ないのではないかと思います。

実は、着物お手入れ店と悉皆屋は全く別の業種

悉皆屋という業種、当店のような着物のお手入れを行うお店もそう呼ばれることが多々あるのですが、実を言うと、その成り立ちや業務内容などには違いがあります。

そもそも、悉皆屋というのは、その字が表す意味から紐解くと、悉く(ことごとく)皆(みな)という意味で、言い換えればあらゆることをする業種という意味になります。

つまりは、悉皆屋というのは、着物に関するあらゆることを請け負うお店である、ということになります。

着物のお手入れを請け負うお店も、染め替えやら仕立て直しやらなども請け負いますので、業務内容的には悉皆屋と非常に似通ったことをしているお店も多いのですが、業務内容的に同じ部分があっても、実は本当の意味での大きな違いがあります。

本来、悉皆屋というのは、自分で加工などは一切行わずに、顧客からの依頼内容によって付き合いのある職先に必要な作業を差配して指示する、いわば総合プロデューサーのようなことをする仕事をするのが、悉皆業なのです。

そして悉皆の名の通り、着物に関するあらゆることを請け負うのが悉皆屋ですので、お手入れ全般だけではなく、新しい着物を誂えるなどの依頼も請け負うのです。

一方、多くの着物お手入れの店は、自社もしくは代表者が直接染み抜きやクリーニングなどの作業を行っていますが、対して悉皆屋は、先にお話したように、仕事の差配をするのが業務ですので、自らは作業を行いません。

ですので、着物お手入れの店と悉皆屋の違いは?と問われたら、自らが作業をするかどうか?が大きな違いということになります。

違いはあるが、特に分けて考える必要はない

ここまで着物お手入れ店と悉皆屋の違いをお話してきましたが、一般の方がそれらを分けて考えて依頼するかどうかを判断する必要はありません。

悉皆屋さんは着物のあらゆることを承るのが仕事ですので、経験豊富な悉皆屋さんであれば、いろんな相談や依頼に応えてくれることでしょう。

一方、着物お手入れ店も、近年は消費者からの要望に応える形で色々な加工などを請け負うようになってきており、業務内容的には悉皆屋と呼んでも遜色ない店が増えています。

また、本来の悉皆屋は昔は少し大きな街であれば必ずあるぐらい多くあったのですが、近年は後継者がいないことによる廃業や和装産業の斜陽化による仕事の減少などが原因で、その数は減る一方となっています。

なをし屋にご依頼いただくお客様からも、街の悉皆屋さんがなくなったことにより、着物のお手入れに出すお店がなくて困ってしまい、ネットで着物を任せられる店を探したという方が多くいらっしゃいます。

そのようなことから、減る一方の悉皆屋さんに代わって着物お手入れ店がその役目を補完している部分は大いにあると感じています。

なをし屋でも、ご依頼者様のご要望に応える形で、自社で出来ることは自社でやり、自社で出来ないことは信頼出来る職先さんにお願いして、悉皆業の役目を補完する業務が多くなってきました。

また、経験豊富な悉皆屋さんとの取引もございますので、着物のことで何か困ったら、遠慮なくお気軽にご相談いただければと思います。

染み抜き屋と悉皆屋が力を合わせてご希望に添えるように知恵を絞って良いご提案をいたします。