着物の色は、染める際に蒸しという工程で熱い蒸気で熱して発色と定着を行い、その後に水元という水洗いで余計な染料を洗い流す工程を経て製品として仕上がっているのですが、その工程を経ても、色が完全に定着しない場合があります。
特に濃い色ですと、しっかりと蒸しと水元を行っても、水に濡らすと色が出ることがあります。
着物の色は、水濡れに弱い物が多い
そのようなことから、洋服に比べても、着物が何らかの水分に濡れることによって、色にじみや色移りのシミになるということは、それほど珍しいことではありません。
また、水分が付いてすぐに乾けば大丈夫なものでも、長時間濡れたままだとジワーッと色が滲み出すこともよくあります。
今回の事例は、おそらくそのような状況で色が滲んで色移りのシミになったと思われるシミのトラブルです。
画像を観ていただくと分かるかと思うのですが、着物の裾部分に、色移りと何かの水分で濡れた跡の輪染みが出ております。
この色移りのシミは、着物の裾周りなどの裏に付ける八掛(はっかけ)という裏地から、表地の着物に色が移ったしみです。
八掛は色の定着度が低い物も多い
この八掛という裏地の生地ですが、染色の工程で蒸しや水元が甘い(しっかりされていない)ことも多く、長時間でなくても水に濡れると色が滲み出すことがあります。
特に濃い染め色の八掛ですと、ほぼ100%水濡れで色が滲んでくるので、シミを落とす作業を行う際には、部分的に解いて作業を行う場合もあります。
このお着物の八掛も、染料の定着度が弱めで、何らかの原因で着物が水分に濡れた結果、色移りのしみになった思われます。
そして色が弱いことから、シミ抜き作業でさらなる色にじみが起こる可能性が高かったので、部分的に解いて作業を行いました。
かなり手間と時間がかかりましたが、ほぼ分からない状態に直せたかと思います。
他店様で断られることが多いこのような色移りのシミでお困りでしたら、お気軽に当店までご相談くださいませ。
【参考価格】画像部分のシミ抜き 50,000円程度(税別)
(※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)