七五三のお参りは、本来は11月15日が正式な日だったのですが、それにこだわると多くの方がお参りに行けないという理由からか、近年は10月後半から11月末ぐらいまでの土日祝日にお参りに行かれる方がほとんどかと思います。
七五三のお参りの後には食事会のようなことをされるご家族も多く、お子さんもお着物を着たままで食事をされるので、慣れない着物を着ていることなどもあり、飲食物を着物にこぼしてしまうことが多くなります。
飲み物や水分のシミは乾くと見えなくなる
食べ物のシミが付くと固形物も一緒に付くので、ほとんどの場合、乾いてもシミ部分がはっきりと分かるのですが、飲み物や汁物などの水分だけの物が付いた場合、赤ワインなどの最初から濃い色素を含んだ水分以外は、乾くとシミ部分があまり分からなくなることがほとんどです。
そのようなシミの場合、付いた時は慌てても、乾いて分からなくなってしまえば安心してしまうのが人の性(さが)ですので、水分が乾いて見えなくなっただけでそこにしっかりとあるシミの存在を忘れてしまいます。
よく着物などを保管している間に身に覚えのない変色シミが出てきた、というお話をされる方が非常に多いのですが、カビによるシミを除くと、ほとんどの場合はシミがなかったところにシミが出てきたのではなく、元からあったが見えなかったシミが経年で変化して変色シミとして見えるようになった、というのが本当のところになります。
三歳の女の子が七五三のお参りの時に着物の上に羽織る被布(ひふ)というベストのような物があるのですが、その被布、それも総絞りで染めた被布に、大きな変色シミが出ています。
正確な年月は分かりませんが、何十年と経って変化(変色)したシミであることは間違いありません。
絞り染めは染み抜きで柄の色が抜けやすい
絞り染めの生地の場合、無理な染み抜きを行うと絞りの色が滲んだり極端に色が抜けてしまって、元の絞り染めの柄が再現出来なくなったりしますので、着物のクリーニングやお手入れの専門を謳うお店でも断られてしまうことが多いアイテムでもあります。
なをし屋は絞りの染めの物でも基本的にはお断りはせずに承っているのですが、やはり中には染み抜き作業自体が出来ないお品物もあるので、その場合はその理由などをご説明させていただいた上で作業をお断りせざるを得ない場合もございます。
今回のこの総絞り染めの被布の場合は、部分的に染み抜きテストを行ったところ、元に戻せないほどの極端な色抜けは起こらなかったので、染み抜きをお引き受けいたしました。
ただ、このお品物に限らず絞り染めの場合は、なをし屋店主が長年の研究で編み出した特殊な染み抜き方法でシミを抜くので、他店様で断られてしまうことがほとんどの絞り染めのシミも抜けるのです。
多くの染み抜き店が行う従来の染み抜き方法の場合、絞り染めの色が極端に抜けたり滲んでしまうことがほとんどなのですが、なをし屋独自の生地と染めに極力負担をかけない染み抜き方法であれば、全てのお品物ではないですが、他店様で断られてしまったお着物などを救えることも多く、これまでにたくさんのご依頼主様の想い入れのあるお品物を救って喜んでいただいております。
かなり時間と手間のかかる難易度の高い変色シミの染み抜き作業となりましたが、あれほど大きな変色シミがあったとは見た目に分からないレベルにまで直すことができ、ご依頼主様にも大変喜んでいただけました。
【参考価格】(特殊な染み抜きのため、参考価格のご提示は難しく、お品物を拝見してテストを行ってからのお見積りになります)
(※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)