染み抜きは江戸時代に着物お手入れの技術として生まれた
染み抜きというと、今は多くのクリーニング店でサービスの一つとして知られているようですが、染み抜きの始まりをご存じの方はほとんどいないのではないかと思います。
染み抜きという仕事の始まりは、それほど最近のことではなく、実は江戸時代にまで遡るくらいの歴史があります。
享保14年(西暦1729年)、朝廷や公家の着用する衣服のお手入れなどを請け負っていた職人を取りまとめて専業にあたらせたのが、染み抜きという職の始まりであり、当時は「御手入師(おていれし)」と呼ばれていました。
染み抜きという匠の技は、始まりより約三百年に渡る歴史が今も脈々と受け継がれており、クリーニング店が行う洋服の染み抜きは、元は着物の染み抜き技術だったものを応用したものに過ぎません。
なをし屋は、着物の技術で洋服を綺麗にします
日本全国のクリーニング店が行う染み抜きのほぼ全ては、着物お手入れ技術として生まれた染み抜きを、誰でも出来るように工程や理論を簡略化した技術に過ぎませんので、付いただけのシミを落とす単なる汚れ落としであれば何とかなっても、変色したシミを抜いてさらにその部分に色修正(染色補正)を施してシミがなかった状態に戻すような高度な作業はまず不可能です。
皆さんがクリーニング店に染み抜きを依頼しても、全くシミが落ちずに「これ以上は生地を傷めます」というタグを付けられてクリーニング代だけ請求されて返されたり、受付の時点で「このシミは直りません」と言われて門前払いされてしまうのは、このような理由に他なりません。
本当にシミが落とせるのは、染み抜き専門店だけ
大切な洋服に変色したシミや黄ばんだシミが出てしまった場合、ほとんどの方はクリーニング店に染み抜きを依頼されるかと思います。クリーニング店は衣類を綺麗にするプロですから、当然のことだと思います。
ところが、染み抜きを専門とする当店へのご相談のうち、クリーニングでシミが落ちなかったというご相談が圧倒的に多いのです。
これは一般消費者の方も誤解されているように思うのですが、クリーニング店の本業は衣類を洗って汚れを綺麗にする店であって、衣類に付いたシミや黄ばみを直す店ではないのです。
それでも、多くのクリーニング店は「染み抜き」のメニューを掲げて集客していますが、それは染み抜きが得意分野ということではなく、単に染み抜きをメニューに掲げていれば、変色や黄ばみのシミで困っている方から集客出来るからに過ぎません。
衿や脇の黄ばみ、ズボンの股部分の黄ばみ、ヘアカラーのシミ、血液のシミ、食べこぼしが変色したシミ などなど…
そのようなシミは、一般的なクリーニング店に依頼しても綺麗になることはまずありません。
「これ以上染み抜きすると生地が傷みます」というようなタグが付けられて、シミが全く落ちていないのにクリーニング代はしっかり請求されて返されるだけです。
ここで当店とお会い出来たのも何かのご縁ですから、ぜひ覚えておいていただければと思います。
変色や黄ばみのシミは、クリーニング店では直りません。直せるのは全国でもごくわずかの染み抜き専門店だけです。
本物の「染み抜き」を提供いたします
とはいえ、染み抜きを専門とする業者(染色補正業)は、着物の染み抜きは出来ても洋服などの染み抜きが出来るところは全国でもほとんどありません。
その理由として、以下のようなことがあります。
クリーニング師の資格がない
これは私も実際に洋服の染み抜きを始めるにあたって知ったことなのですが、着物以外の衣類の染み抜きを業務として行う場合、クリーニング業法という法律において、クリーニング師という資格が必要になります。
先にお話したように、染み抜きには約三百年の歴史があり、染色補正業がその始祖であるのですが、何故か我が国の法律では近世に作られたクリーニング師という資格がないと、洋服の染み抜きを行ってはいけないという決まりがあります。
普段は着物を触っている染色補正の職人も、わざわざクリーニング師の資格を取ってまで洋服の染み抜きに進出しようという変わり者野心のある人はほとんどいませんので、洋服の染み抜きが出来る染み抜きの専門店は全国でもほとんどないというが実情となります。
着物は絹がほとんどなので、絹以外の繊維の知識が乏しい
ご存じの方も多いかと思いますが、着物の多くは絹(シルク)で生地が作られて染色されておりますので、着物の染み抜きを専門としている職人は、染み抜きや色修正の技法も、絹のための技法と知識を身に着けておけば事足ります。
かたや洋服の場合、お手持ちのお洋服の洗濯表示のタグを見ていただくと分かると思うのですが、実に様々な繊維を使って生地が作られております。それも一種類だけではなく、何種類も混紡されていたりします。
繊維というのは、その糸の原材料・製造方法・染色方法などが繊維ごとに全く異なります。
それらが違うということは、使える薬品や染料及び技法も違ってくるということなので、それぞれの繊維における技法や知識と経験が必要になります。
絹の染み抜き技法のみ使える職人に洋服の染み抜きが出来ない最大の理由がここにあります。
職人は変にプライドが高い
着物のお手入れをしている職人の多くは、着物業界の端くれであることを誇りに思っており、それ自体は何ら問題ないのですが、昔からクリーニング業などの洋服を扱う業種を見下す考えの職人が非常に多いのも事実です。
クリーニング業のことを「洗濯屋」と呼んで、着物をメンテナンスしている自分たちよりも格下の存在であるかのように思っているので、クリーニング店が行う洋服の染み抜きやメンテナンスをするのは恥だと思っている職人もいるようです。
本物の染み抜き専門店の染み抜き事例です
CELINEのTシャツに大量に付いた、ウーロン茶のシミの染み抜きです。お茶類にはタンニンという成分が含まれており、このタンニンが原因で、洗濯しても落ちないシミになってしまうのです。
タンニンが原因で生地に定着してしまったシミは、染み抜き用の薬剤を使って、その化学反応を用いないと、シミが消えてくれません。今回は地の色が白でしたので、色抜けの心配をせずにシミを抜くことが出来ました。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 10,000円程度(税別)
ジャケットの脇の汗による経年変化の変色の色修正です。このようになった場合は、汗を染み抜きで落とした後に、染料による色修正で元に戻す作業を行います。
クリーニング店で色修正が出来るお店は全国的にもごくわずかしかなく、かなりの確率で断られてしまう事例ですが、見た目にはそこに脱色があったとはわからないレベルに直せました。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜きと色修正 両脇で10,000円程度(税別)
デニムのパンツに付いたインクのシミです。
インクのシミの染み抜きは難易度が高く、さらにデニムは染色が特殊なので、無理に染み抜きを行うと色が剥げてしまうリスクが大きく、染み抜き専門を謳うお店でも断られてしまう場合がありますが、デニムの質感を損ねることなく綺麗に落とすことが出来ました。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 8,000円程度(税別)
革のライダースジャケットの、日焼けによる退色(褪色)の色修正です。
革の染色は、染料の耐久性や定着度などを考慮する必要があり、通常の衣類に使う物とは異なる特殊な染料を使うため、修正するための色を合わせるのが難しく、一般的なクリーニング店ではまず断られてしまう事例ですが、染み抜き専門店ならではの染色補正技術で、元通りに。
【参考価格】画像部分の褪色の染色補正 30,000円程度(税別)
シミの原因が不明で、洋服が部分的に脱色・変色してしまうという事例は度々あるご相談ですが、塩素系漂白剤による激しい脱色や、広範囲の脱色でなければ、多くの場合は見栄え良くすることが可能です。
この事例は、何らかの原因で、ジャケットの袖口が変色していました。原因物質を染み抜きした後、染色補正(色修正)の技術で元通りに。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 5,000円程度(税別)
白いジャケットに大量に付いたチョコレートの染み抜きです。チョコレートは、カカオ豆をすり潰したペーストと砂糖やミルク分なんかを混ぜて作っているそうですが、カカオ豆は油分が多く、そのあたりのことからも、チョコレートのシミは基本的に油性の染み抜き処理が必要となります。ですので、今回も油性の染み抜きを一箇所ずつコツコツと染み抜き処理を行いました。
白い衣類はシミが完全に落ちないと残ったシミが目立ちますが、専門店ならではの技術で綺麗に落とすことが出来ました。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 15,000円程度(税別)
スカートに付いた赤ワインの染み抜きです。赤ワインのシミは色素を分解するシミ抜き剤を使う必要があり、お品物の地色が抜けてしまうリスクが高く、専門店でも染み抜き不可能と言われてしまうことが多いのですが、当店ではまずお断りすることはありません。
地色を脱色させずに赤ワインの色素を分解する特殊な染み抜き方法で、綺麗に。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 8,000円程度(税別)
ノースリーブのワンピースに脇に付いた汗によるシミの染み抜きです。汗は、染み抜きをせずに放置していると、生地と染色を変色させる力が非常に強く、汗は水性のシミなので、ドライクリーニングだけでは落ちないので、汗のシミが付いたら、そのまま保管せずに早めの染み抜きが肝心です。
当店では、汗のシミは水を使った汗抜きを行います。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 5,000円程度(税別)
PRADAのワンピースの背中に浮き出た、汗の塩分によるシミです。某高級クリーニング店で汗抜きクリーニングという物を行って保管されていたそうですが、ドライクリーニングだけでは大量に付いた汗は落とせません。
汗は汗抜きという染み抜き作業で落とす必要があります。時間はかかりましたが、汗の塩分を落として元通りに。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 15,000円程度(税別)
インポート物のシルクの製品は生地や染色が繊細な物が多く、雑に扱うと容易に生地や染色が傷むことがあります。
が、なをし屋は着物の染み抜き技術でお洋服なども染み抜きいたしますので、繊細なお品物でも問題ございません。
黄ばみを抜いて、周囲の自然な生成り色に合わせて色修正を行いました。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 5,000円程度(税別)
このお品物は、素材にポリウレタンという繊細な扱いが必要な繊維が含まれておりましたので、染み抜き作業もあまり無理が出来ない素材でした(ポリウレタンは、無理に熱を加えたり強い薬品を使うと、溶けたり変質したりする繊維です)
今回は、生地に極力負担をかけないように染み抜きを行い、何とか気にならない状態に直せましたが、ポリウレタンが混紡されている洋服の生地は多く、シミや生地の状態などによっては、作業をお断りをせざるを得ない場合もございますので、その点はご了承ください。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 5,000円程度(税別)
特にウールやカシミヤなどの獣毛の類いの天然繊維は、薬品に弱い性質があり、黄ばみのシミなどを無理に染み抜きすると、繊維が溶けて生地の脆化や穴が開いたりする事故のリスクがあります。
なをし屋は洋服の染み抜きにも長年の経験がありますので、ウールのお洋服の染み抜きも承っておりますが、それでもウール素材の変色シミは、繊維的に無理が出来ないという物理的理由から、お断りせざるを得ない場合もございます。
今回は、ウールのお洋服ですが、シミが小さかったのとテストでかなり薄く出来たので、お引き受けさせていただきました。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 2,000円程度(税別)
このシミも、ポケットの中にボールペンが入っていてそのまま洗ってしまった結果、インクが漏れ出す事故となったシミです。
洗いでインクが漏れ出した場合、かなり濃いシミになっていますので、書いた程度のシミに比べると、手間も難しさも比較にならないくらいのレベルの染み抜き作業となります。かなり大変な作業でしたが、完全に分からない状態に直すことが出来ました。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 10,000円程度(税別)
染み抜き参考価格表
料金は参考価格となります。正確な料金はお品物を拝見してのお見積りとなります。
※小さいシミ=1平方cm以下 中くらいのシミ=3平方cm以下 大きいシミ=3平方cm以上
変色の無いシミ | |
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小さいシミ | 2,200円~3,300円(税込) |
中くらいのシミ | 3,300円~4,400円(税込) |
大きいシミ | 5,500円(税込)~ |
黄変・変色したシミ | |
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小さいシミ | 3,300円~5,500円(税込) |
中くらいのシミ | 5,500円~7,700円(税込) |
大きなシミ | 8,800円(税込)~ |
退色・脱色 | |
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小さいシミ | 3,300円~5,500円(税込) |
中くらいのシミ | 5,500円~7,700円(税込) |
大きなシミ | 8,800円(税込)~ |
インク・血液・ボンドなど | |
---|---|
小さいシミ | 3,300円~5,500円(税込) |
中くらいのシミ | 5,500円~7,700円(税込) |
大きなシミ | 8,800円(税込)~ |
【数の多いシミ・全体の汚れ・変色・退色・色移りなど】
お品物を拝見して、作業時間を算出した上でお見積りさせていただきます。
なをし屋代表の染み抜きへの想い
【なをし屋】代表・染色補正師の栗田です。 当店に興味を持っていただき、本当にありがとうございます。代表とか言ってますが、何と私独りで営んでいる、小さなお店です。
なをし屋の強みと他店様にない特徴は、着物の街【京都】に約三百年伝わる染色補正の流派、【幾久屋流】の伝統ある技を継承し、最新の技術・設備・化学・理論を組み合わせた、独自の染み抜き技術を持つ染み抜きの専門店ということです。 一般的なクリーニング店は、付いただけの汚れ落としは出来ても、色修正(染色補正)を伴う染み抜きの出来るお店が非常に少ないのが現状で、変色したシミを直せるお店は、染み抜き専門を謳うお店も含めてほとんどありません。 衣類のシミが変色した部分を色かけによって元の色に戻す技術は、伝統の職人技「染色補正」がもっとも得意とする分野です。 お着物はもちろんのこと、洋服などの衣類の染み抜きも、染色補正師が代表を務める、なをし屋におまかせください。 ネットで検索すると、世の中に染み抜きやお手入れを行うお店は数多くあるということに驚かれる方もおられると思います。「どこのお店に大切な着物や洋服を託せば良いのか、情報が多すぎて選べない」というお悩みをお聞きすることもあります。 ですが、多くのお店は集客と取り次ぎだけで、あとの作業は全て下請けに出しているか、受付と作業をする人が全く別で、機械的に流れ作業で預かり品を動かしていくので、現場と作業を行う職人の意思の疎通が難しく、職人に直接相談が出来ませんので、ご依頼者様の想いや細かいご要望などが伝わりません。 なをし屋は、ファーストコンタクトのご相談のお伺いから検品テスト・お見積もり・染み抜き作業まで、同じ職人が一貫して行います。 お客様のご要望はもちろん、お品物への想いや愛情まで、実際に作業を行う職人【染色補正師・栗田 裕史】が責任を持って承ります。 伝統と革新の技術を融合させた、他店様とは一線を画するクオリティの高い【染み抜き京都職人】の技で、お客様の大切なお着物と衣類、そして想いを救います。 なをし屋 代表・染色補正師 栗田 裕史 |
よくある質問
Q 何年も前のシミ、他店では修復不可で断られたんですが、直りますか?
A 古いシミであっても、基本的に生地が傷んでいなければ染み抜きは可能な場合がほとんどです。当店の代表は、古いシミの染み抜きを最も得意とする職人です。仕上がりはシミの濃さ・大きさ・着物の色合いなどによって変わってきますので、まずはお気軽にご相談ください。
Q 他店でシミを抜くと色が抜けるので直せないと言われました。直せますか?
A 染み抜きに色抜けはつきものです。当店の代表は染み抜きに関わる全ての国家資格を持つ職人です。染み抜きで色が抜けても染色補正という技術で元に戻します。
Q シミが付いたら一刻も早く染み抜きをお願いした方が良いですか?
A シミの染み抜きには優先度があります。変化しやすい順に、汗や血液⇨食べ飲みこぼし⇨その他のシミ。汗や血液が付いた場合は、一ヶ月以内、食べ飲みこぼしは三ヶ月以内くらいが目安になると思いますが、どのシミであっても早いに越したことはありません。
Q シミを付けてしまいました。お願いする前に何かした方が良いですか?
A 基本的には一切何もしないでそのままの状態でご依頼ください。擦ったり水や洗剤を使って染み抜きを試みると、シミが落ちなくなったり生地や染色が傷む危険性が非常に高くなります。シミが付いてすぐの応急処置としては、ティッシュやハンカチなどでそっと押さえてシミの水分を吸わせて、あとは後日プロにお任せください。付いただけのシミで何もしなければ、綺麗に落とせる場合がほとんどです(墨や毛染め剤などの特殊なシミを除く)
Q 他店でシミが落ちなかったのに料金を請求されました。
A 当店は成功報酬制ですので、シミが全く落ちなかった場合や着用出来る状態にならなかった場合(:注:当方の判断によります)は、染み抜き料金はいただいておりません。
Q お見積りや相談に料金はかかりますか?
A お見積りとご相談、染み抜き可否のテストの料金はいただいておりません。配送でお預かりした場合は、お返しの際の返送料を着払いにてご負担いただいております。
Q 染み抜き料金の支払い方法は?
A 【店頭でのお支払い】現金・各種クレジットカード・電子マネー・オンライン決済
【郵送でのお支払い】現金と各種クレジットカードの代金引換・発送前のお振込及びネットでのクレジットカード決済
料金の合計が税抜き10,000円以上の場合は、代金引き換え手数料は当店が負担いたします。
Q 相談などなしに依頼品をいきなり送っても良いですか?
A 申し訳ございません。当店では、まずはご相談を承ってから、お見積もりの後に染み抜き・クリーニング作業へという流れにさせていただいております。
お着物やお洋服などのシミなどでお困りやお悩みがございましたら、まずはお気軽にご相談ください。
Q 見積もり後に依頼をキャンセルすることは可能ですか?
A もちろん可能です。配送の場合は返送料を着払いにてご負担ください。作業開始後のキャンセルは一切承っておりません。
Q 依頼品を送る場合と返送してもらう場合の送料は?
A 当店にご依頼品をお送り頂く場合、お客様に送料をご負担いただいております。
料金の合計が税抜き10,000円以上の場合は、返送料は当店負担となっております。