黒留袖という着物も、そのイベント(主に結婚式)がなければあまり着ることのないお着物なので、前に着たのはいつだっけ?と思うぐらいに仕舞いっぱなしになっていることが多い着物です。
仕舞いっぱなしになっているということは、湿気を帯びやすいし、カビも生えやすくなります。そして、着た際に付いたシミを気づかずにしまっていると、何十年という月日が流れる間に見覚えのない変色・黄変シミが出ているということはよくあります。
その見覚えのない、そしてある意味で身に覚えのないシミに、汗による変色シミがあります。
汗のシミは、気が付かないうちに変色している
汗は、その成分の99%が水分だそうで、無色透明ですから、乾いてしまえば見えにくくなります(濃い地色の生地に汗が付いた場合は、乾いても跡がよく見えます)
見えにくくなったということは、可視化されていないというだけで、シミの成分はそこに変わらず留まっているんですが、見えないシミを染み抜きするというのは、汗の危険性を知っている方でなければ中々にそこに思い至らないと思います。
ですので、私は日々、着物お手入れの中でも汗は染み抜きの優先順位が一位であると皆さんにお伝えし続けております。
黒留袖の衿なんですが、残留した汗によって黄ばみの変色シミになっています。
よく、衿のお手入れをベンジンで落とす方法がネット上の動画などで観ることが出来ますが、ベンジンだけでは汗は落とせないので、何回か自分で衿汚れを落としたら、プロに汗抜きも依頼して、残留している汗を落としておく方が良いと思います。
ベンジンによるお手入れでは汗は落ちない
そのままベンジンだけでお手入れを繰り返して着続けていると、いずれは汗による変色が起こるのは確実です。
そうなると、単なる汗抜きだけではなく、変色・黄変のシミの染み抜きと色修正が必要になるので、汗抜きとお手入れの何倍ものお手入れの金額がかかってしまいます。
汗は確実に着物の色を変質させてしまうので、汗のシミは必ずプロの手で汗抜きをされることを強くおすすめいたします。
汗を抜き、汚れを落とし、周囲の色と馴染むように染色補正を行いました。
【参考価格】画像部分(両衿)のシミの染み抜き・染色補正 15,000円程度(税別)
(※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)