街のクリーニング店では、皆さんも御存知のように洋服をクリーニングしてくれますが、なをし屋のように着物のクリーニング専門店では、着物を専門にクリーニングしています。
洋服と着物、大きな括りでは同じ衣類ですが、染色方法や縫製などの作り方は大きく異なります。
そんな大きく異なる衣類である洋服と着物、綺麗にするための洗いを同じクリーニングという名称で呼んでいますが、洗いの方法も同じなのでしょうか?
洋服のクリーニングと着物の丸洗いは何が違うのか?
結論からお話しますと、石油系溶剤で専用のドラム式洗濯機で洗うという、いわゆるドライクリーニングという点ではどちらも同じクリーニングです。
では、洋服のクリーニング方法と全く同じやり方で着物をクリーニングしているのか?というと、いくつかの点で異なったり変えている点があります。
石油系溶剤は、着物に適した物を使って洗う
ドライクリーニングは、ドライという言葉の意味の通り、水を使わずに洗うクリーニング方法です(ドライの対義語はウエット、つまりは水濡れ)
水を使った洗いではないので、生地の極端な縮みや色なきなどのトラブルは基本的に起こらないのですが、石油系溶剤を洋服を洗うものと同じ溶剤で着物を洗うと、着物の柄によく使われている金彩加工が剥がれたり、染色の色が滲んだりなどのトラブルが起こる可能性が高くなります。
ですので、同じドライクリーニングではありますが、着物のクリーニングには、着物に適した石油系溶剤で洗っています。
洗う時はネットに入れて洗う洗い方
洋服のクリーニングの場合、特にデリケートな物を除くと、そのまま洗う機械に入れてぐるぐると回して洗いますが、着物は絹で特にデリケートな衣類なので、一点一点ネットに入れて洗います。
洗い方自体が優しく洗う洗い方
洗い方そのものも、洋服と着物は違いがあります。具体的な話をしますと、機械の設定を細かく調整して、洗う時間・洗う回数・脱液の時間などを着物に適した方法で洗っています。 なをし屋と他店様の洗い方の違い
着物の乾燥は自然乾燥
洋服の場合、手間や時短の関係でクリーニング後は乾燥機に入れて乾かす場合が多いのですが、着物をクリーニング後に乾燥機に入れて乾かすと、生地の縮みや金彩加工の剥がれなどが起こる可能性が高くなるので、洗った着物は吊った状態で時間をかけて自然乾燥します。
着物のプレス仕上げは全て手作業
洋服の場合、部分的もしくは全体を機械で自動的にプレス仕上げを行うことが多いのですが、着物のシワを伸ばして整えるプレス仕上げは、全ての工程を手作業で行っています。
その作業は大変手間がかかり、熟練の手技でないと着物の仕立てが狂ってしまう作業なので、着物の縫製や生地の種類などに精通している熟練の職人による作業が必要です。
洋服 | 着物 | |
---|---|---|
溶剤 | どの洋服も同じ | 着物に適した物 |
洗い方 | そのまま洗う | ネットに入れる |
洗い方2 | 強めに洗う | 優しく洗う |
乾燥 | 乾燥機に入れる | 吊って自然乾燥 |
仕上げ | 機械を使う | 全て手仕事 |
着物のクリーニングは、洋服のクリーニング店ではリスクも
街のクリーニング店さんは、扱う仕事の大部分が洋服ですので、洋服のクリーニングのノウハウに長けていても、着物にはあまり詳しくないお店がほとんどです。
実際にお客様から聞いた話ですが、街の一般的なクリーニング店に着物をクリーニングに出して、着物の生地の張りがなくなってコシのない着にくい状態になってしまったり、金彩加工が剥がれてしまったり、プレス仕上げで絞りの凹凸が消えて生地が平坦になってしまったりというトラブルが起こることがあります。
また、クリーニングに使う石油系溶剤には、ソープという一種の洗剤を混ぜて洗剤の汚れ落としの作用に加えて、ソープの界面活性剤の性質を利用して、溶剤つまりは油に水分を含ませることによってより汚れが落ちるようにするのですが、洋服用にソープが多めに含まれているクリーニング溶剤は、含まれる水分量も多くなるので、その溶剤で着物を洗うと、着物の色にじみや紋の泣き、仕立ての縮みなどが起こる可能性が高くなります。
もちろん、しっかりと着物をクリーニングしてくれるクリーニング店さんもありますが、数多くある街のクリーニング店の中からそのようなお店を選ぶことはなかなかに難しいので、失敗したくない大切なお着物は、着物専門のクリーニング店に出す方が良いと言えるでしょう。