何十年と保管されていた着物や、どこからか購入したアンティークやリサイクルの着物は、カビ臭や独特の臭いがすることがあります。
大手のリサイクル着物店などは、販売前にクリーニングを行って店頭に並べていることが多いようですが、それでもやはり臭気は改善する程度ですし、ましてやフリーマーケットなどで購入したものは何らお手入れされておりませんので、かなり強い臭いがすることも少なくありません。
そんなアンティーク着物などのカビや古い保管臭などを、自宅で改善する方法をご紹介します。
まず、臭い(匂い)の原因のメカニズムを理解する
臭い(匂い)というものは、においの物質(分子)が揮発(空気中に漂うこと)されて、それが人の嗅覚に検知され、それが心地よく感じるものであれば良い匂いとなり、そうでないものは悪臭と感じるわけです。
そして臭気の原因であるにおいの分子ですが、生ゴミなどの存在する限りは臭いの分子が生成されるものを別にすれば、臭気自体はその物体に付いている(染み込んでいる)ものなので、付いている臭いの分子を強制的に揮発させて飛ばしてしまえば、理屈的には臭いの元となる分子が減って、感じる臭いも軽減するということになります。
臭いの分子を揮発させるには、風と熱が有効
では、臭いの分子を強制的に揮発させるにはどうすれば良いのでしょうか?
その答えは、揮発性物質を臭いが付いている生地から強制的に揮発させるために、風と熱を加えることが有効です。
そこで、自宅でも出来るアンティーク着物や何十年と保管されていた古い着物のカビ臭や独特の臭気を改善する方法をご紹介いたします。
自宅でも出来る、着物の保管臭の改善方法
先にお話したように、臭気の原因である臭いの分子を着物から強制的に揮発させるには、風を当てることと熱を当てることが有効な方法となります。
それらの方法の中で自宅でも出来る方法を、着物お手入れの専門家がいくつかご紹介していきます。
(※あくまでも無理のない範囲の自己責任でお願いいたします※)
風通しの良い場所で干して風を当てる
臭いの分子を強制的に揮発させるためには、風を当てることは有効な方法です。
ですので、アンティークや古い着物を風通しの良い場所に干して、風を当てることによって臭いの分子を強制的に揮発させる方法が考えられます。
要は、カビなどを防ぐために定期的に行う陰干し・虫干しの要領ですね。
注意点としては、着物を吊って干す時間が長過ぎると、表地と裏地の収縮による仕立てのバランスが崩れて縫い目部分の生地のダブつきなどが起こる可能性があることと、吊ったままにしておくことで、陽の光や室内光の紫外線により、着物の色が褪せてしまうことがあります。
また、風に当てるだけでは熱による効果がなく、臭いの分子を揮発させるには力不足は否めないので、強い臭気には実感出来るような変化は起こらない可能性があります。
アイロンの蒸気で臭いの分子を揮発させる
蒸気アイロンを当てることは、臭いの分子を強制的に揮発させるには効果的です。
アイロン自体の熱と蒸気による熱で、臭いの分子が揮発しやすくなり、臭気が軽減する効果が期待出来ます。
注意点としては、蒸気、つまりは蒸発した水分がアイロンから出続けますので、やり過ぎると生地の縮みなどが起こる可能性がありますし、蒸気の通りが良くないアイロンで蒸気を当てた場合、うまく蒸気にならなかった水分がポタポタと落ちて生地に付き、水ジミや色にじみのシミになる場合もあります。
また、家庭用のアイロンは、シワを伸ばすために底部分がかなり熱くなるように作られていますので、着物にアイロンをかける場合には、中温で真っ白の綿素材の当て布を当てながらアイロンをあてるのが良いかと思います(染めてある手ぬぐいなどを当て布に使うと、蒸気の水分と熱で色が着物に移る恐れがあるため)
ドライヤーの熱で臭いの分子を揮発させる
ドライヤーから出る熱風を使って、風と熱を当てて臭いの分子を強制的に揮発させる方法も有効的です。
ただ、着物の広い範囲にドライヤーの熱風を当て続けるのは中々に大変な作業ですし、ドライヤーの熱風は温度が高いので、うっかり同じ場所に長時間熱風を当て続けてたりすると、生地が焦げる可能性もあります。
また、古いドライヤーは熱風の吹き出し口から火が出ることもありますので、熱風を当てる際には生地に近づけすぎないように十分に注意する必要があります。
一番効果的だったのは、浴室乾燥の熱風を当てる方法
家庭で出来るであろう着物の臭い取りの方法の、今まで試した中で一番効果的だったのは、浴室に着物を吊って浴室乾燥の熱風を当てる方法でした。
浴室乾燥であれば、元が衣類の乾燥を目的としているので、熱風により生地が傷む心配もありませんし、風を強制的に当てながら換気をするので、熱風で揮発した臭気の分子が絶えず外に吸い出されながら、着物の生地が吸い込んだ臭いの成分が揮発し続けるという、臭いの成分を強制的に揮発させてカビ臭さや古い臭いを改善する方法としては、今までの経験からお話しても、理想的な方法だと思います。
この浴室乾燥による方法は、着物だけではなく、水洗い出来ない衣類の臭い取りにも効果があります。
例えば、水洗い出来ないコートに付いたタバコや焼肉の臭いなどを軽減することにも効果があります。
注意点としては、その効果が強めな分、浴室が揮発した臭気の成分で臭くなってしまう場合がありますので、着物の臭い取りに浴室乾燥を使う場合は、作業後に十分に換気を行うことが必要となります。
また、より高い効果を期待するには、浴槽にお湯をためて上がってくる蒸気を着物や衣類に当てつつ浴室乾燥の熱風を当てる方法がありますが、この方法の場合、水分を吸収することによる生地の縮みや、吊った状態から衣類や着物が浴槽に落ちてしまう水没事故の可能性もありますので、この方法をされる場合は、くれぐれも気をつけて作業をするようにしてください。
プロに任せるなら、除菌や消臭が出来るお店に
ここまで自宅で出来る着物の臭い取りの方法をご紹介してきましたが、やってはみたけどあまり効果が感じられないということもあるかと思います。
その場合は、いさぎよく着物お手入れのプロに任せてみるのが良いかと思います。
なをし屋では、丸洗いと遠赤外線による除菌・脱臭を組み合わせたプランがありますが、着物のカビ臭や古い臭いの軽減に効果があり、ご利用いただいた方には大変ご好評をいただいております。
また、当店以外ですと、丸洗いの際にオゾンによる除菌・脱臭をしてくれるお店もあるようです。
当店はオゾンによる除菌・脱臭は行っていないので、その効果がどこまであるかをお話は出来ないのですが、ご興味がある方は、直接そのお店に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
以上、ご自宅で出来る、アンティーク着物や古い着物の臭い取りの方法を、着物お手入れの専門家がご紹介いたしました。