毎年、夏が終わる頃から、七五三用のお着物のお問い合わせが一気に増えます。

七五三やお宮参りで使う祝い着は、それを着る子供さんがいないと、しまったままで何十年と経っていることが珍しくないので、シミも濃い変色シミになっていることが多いです。

シミが濃くて残る場合は、柄足しという方法があります

お子様のお着物は、商品の善し悪しは別にして、生地があまり丈夫ではありませんので、染み抜きであまり無理が出来ません。

祝着を手にとってみた方は分かるかと思うのですが、概ね生地は薄い物が多く、裏地に正絹ではない生地を浸かっていることが多いです。

また、表地の着物部分に絹ではない化学繊維を使っている場合もあります。

生地が薄かったり化学繊維が含まれていると、なぜ染み抜きで無理が出来ないか?というと、変色シミというのは、見た目に大丈夫でも生地にダメージを与えている状態ですので、そのダメージのある生地に対して強い染み抜きを行って負担をかけると、シミによるダメージと相まって、生地の脆化や損傷が起こる可能性が高くなります。

祝着の場合、元から生地が薄いので、生地のダメージも深刻化しやすいという面がありますので、変色シミの染み抜きは、シミが濃ければ濃いほど黄ばみなどが残りやすくなる傾向があります。

 

三歳用祝い着 濃い変色シミ 染み抜き・クリーニング前

 

三才用の女児祝着の袖に、大きくかなり濃い古いシミが出ています。

染み抜きと柄や金彩加工を足して直す方法

お見積りの際に染み抜きテストを行ったのですが、予想通り、シミは薄くなっても黄ばみが残りました。

そこで、ご依頼者様にその旨をお伝えし、限界までシミを抜いた跡に柄を足してシミを隠す方法をご提案しました。

 

三歳用祝い着 濃い変色シミ 染み抜き・クリーニング後

 

限界まで染み抜きした状態です。かなりシミは薄くなりましたが、まだはっきりと見える状態でシミの黄ばみが残っています。

 

三歳用祝い着 濃い変色シミ 染み抜き・クリーニング柄足し

 

シミを抜いた部分を色修正で整えて、このお着物には扇の柄があったので、その扇の形を参考に金彩加工の扇の柄を足し、残ったシミが見えないようにいたしました。

柄を足す場合、シミの箇所だけに柄を足すと全体のバランスが崩れるので、全体を見た際に統一感が出るように、他の箇所にも最低限の柄を足します。

祝い着や振袖は特に元々が華やかな柄が施されておりますので、金彩加工の柄を足しても、派手にならずむしろ華やかさが増した感じに仕上がることが多いです。

どんな着物や柄にも使える手法ではありませんが、このような方法で着用出来るようにすることも可能だということを、ぜひ覚えておいてください。

【参考価格】画像部分とそれ以外の全体的な染み抜き・柄足し(全体的にバランスを整えるための柄足しを含む)60,000円程度(税別)
※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)

着物丸洗い・カビ取り・汗抜きなどの料金表