日々たくさんのお着物やお洋服のシミと向き合っているのですが、常に当たり前のようにあるシミなので、特に事例で取り上げたことがなかったのですが、よくあるシミということは、それだけ困る方も多いであろうということで、今更ながら取り上げてみました。
口紅のシミは比較的落ちやすいシミだが、注意も必要
口紅は人体に使う化粧品ですし、クレンジングの類などでも簡単に落とすことが出来ますので、染み抜きにおいても簡単に落とせると思っている方も多いかと思います。
実際に口紅のシミは染み抜きで落としやすい部類のシミになりますが、それは付いてそのままにしてあった場合という注釈がつきます。
近年、市場に出回っている口紅類は、全てがそうというわけではありませんが、食事などで落ちにくいことを謳っている商品が多く売られています。
落ちにくいということは、落としにくいと言い換えることも出来るわけで、付いてそのままにしておけば綺麗さっぱり比較的簡単に落とせたはずの口紅のシミも、下手に落とそうと触ってしまったために、非常に落ちにくくなってしまうこともあります。
口紅のシミを自分で水で落とそうとするのは、最悪な対応
特によくあるのが、口紅が付いたので慌てて水で濡らしたタオルなどでこすってしまったというトラブル。この手当てが最悪な点が二点あります。
まず一点目、口紅を水で濡らして落とそうとしたことで、中途半端に口紅が溶け出し、生地をある意味染めてしまった状態にしてしまうこと。
先にお話したように、近年出回っている口紅は、落ちにくいことを売りにしている物が多いのですが、詳しい成分が分からないので、そのような作用があるのかハッキリとは判断出来ないのですが、水で中途半端に濡らしてしまうと口紅の中の色素が溶け出すのか、その後乾くと非常に落ちにくいシミに変化することがあります。
もう一点は、特に絹の着物の場合、水で濡らしたタオルなどでこすると、生地の表面が細かく毛羽立って、スレという角度を変えて見ると白く光ったように見える状態になり、完全にもとに戻すことは不可能になります。
シミそのものが落ちにくくなることもさることながら、濡らした状態で擦るという行為は生地を傷めてしまう危険性が非常に高いので、絶対にしてはいけないということを覚えておいて頂きたいと思います。
前置きが長くなりましたが、着物に口紅のシミがついております。
このシミは、付いて何もせずにお任せいただいたので、問題なく染み抜きで落とせました。
口紅のシミなんてプロに任せるほどではない…とお考えになるかもしれませんが、無理にご自分で落とそうとすると、被害が拡がったりする可能性が高いので、無理はせずにプロにお任せください。
【参考価格】画像部分の染み抜き 2,000円程度（税別）
（※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。）
