着物を着る(着付けてもらう)時に、仮止めをするためのクリップがあります(着物クリップの名称で通じるようですが、どのような物かは検索してご確認ください)

その着物クリップ、色々な柄や色の物があるようですが、美容院で着物を着付けてもらった際に、仮止めに着物クリップを使ったところ、そのクリップから着物に色が移ったというご相談がありました。

素材にもよるが、劣化した素材から色が移ることがある

小物類などは、その素材が劣化して色が移ったり粘着質な物が付いてしまったりすることがあります。

着物クリップですと、挟む部分のゴムが劣化して着物に付くということは比較的良くあるトラブルですし、その他には、和装用のバッグの表面の素材が劣化して色が移ってしまったトラブルもありました。

そして今回のトラブルですが、着物クリップから鮮やかな赤というかピンク色が着物に移ってしまったようです。

 

着物クリップ色移り 染み抜き・クリーニング前

 

通常、このようなシチュエーションで色が移る場合、着物クリップから色が移ったとしたら、表面的に付くだけのはずなので、シミを抜くのはそれほど困難な作業にはならないはずなのですが、この色移りは、何故か生地にしっかりと染まったような状態になっており、色移りの原因となったクリップの現物を見ておりませんし、着物クリップから色が移ったというのはあくまでご依頼者様の申告なので、もしかしたら、実際には着物クリップではない何か他の物からの色移りだったのかもしれません。

そう考えるのに至った理由は、この色移りのシミの異様なまでの落ちにくさでした。

着物を染める染料には、抜くのが難しい色がある

着物を染める染料は、主に酸性染料という染料を用いるのですが、その中でも鮮やかな赤やピンクに染めるために使われる染料があります。

その名をローダミン、我々着物業界人は紅梅(こうばい)と呼んだりもします(ローダミンには、塩基性染料もあります)

このローダミンという染料は、鮮紅色(せんこうしょく)を表現するのに欠かせない染料なのですが、通常の酸性染料と違い、酸性染料を抜染する薬品では、全く抜けないのです。

そして、今回のトラブルの色移りは、染み抜きテストを行ったところ、まさにこのローダミンでした。

ですので、通常の色移りを落とす染み抜きではあまり効果が見られなかったので、ローダミンを染み抜きする特殊な方法で染み抜き作業を行う必要がありました。

 

着物クリップ色移り 染み抜き・クリーニング中

 

このように、時間と手間をかけた特殊なシミ抜き方法で、移ったローダミンの色を限界まで染み抜きしました(このような難しい事例で前後の画像だけを載せると、インチキしているなどと言ってくるバカな面倒臭い同業者の人がたまにいるので、今回は途中の画像も載せました)

 

着物クリップ色移り 染み抜き・クリーニング後

 

染み抜きで抜けてしまった部分に染色補正(色修正)を施し、周囲と馴染むように元の状態に戻して完了です。

【参考価格】画像部分のシミ抜き 10,000円程度(税別)(全体の染み抜きの料金はお見積りとなります)
※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)

着物丸洗い・カビ取り・汗抜きなどの料金表