黒留袖は、数ある着物の中でも、トップクラスに保管中のカビが生えやすい着物です。(他には、泥染めの大島紬や黒紋付など)
その理由として、比翼という中に付いている白い別生地の分、畳んだ時の生地が分厚くなることもあるかと思います。
黒留袖は、着物の中でも特にカビが生えやすいので注意
仮説になりますが、おそらく、比翼などが付いていて生地が何層にも重なった状態で保管されるため、風が通りにくく湿気がこもりやすいため、カビが生えやすいのだと思います。
カビには段階があり、白っぽいカビが生地の表面に出ている状態であれば、カビ落とし・クリーニング・除菌で綺麗になる場合がほとんどですが、さらに進んだ段階のカビが変色したシミになっている状態の場合は、染み抜きや色修正などの作業が必要になります。
ですので、カビは初期の段階の変色する前の状態でお手入れする方が、仕上がりも綺麗ですし、クリーニング料金も抑えられます。
仕舞いっぱなしのお着物がある方は、カビや変色が発生していないか、ぜひとも点検をお願いしたいです。
今回は、黒留袖の柄部分がカビによる変色を起こしている状態の物の修復です。
長年経過したカビにより、変色シミがかなり濃くなっております。
このように柄の部分に変色シミが出た場合は、染み抜きだけはなく、柄を元に戻す修正作業が必要になります。
柄部分のシミは、柄足しという修正方法がある
柄を足すのではなく(足す場合もありますが)、柄を修復して元に戻す加工です。
巷の着物クリーニングや染み抜きのお店では、シミが落ちない場合に柄を足して誤魔化す職人さんもいるようで、もちろん、それ自体は全く悪いことではないですし、なをし屋も、染み抜きと染色補正ではどうしても直せないシミや、生地が劣化していて物理的に染み抜きが出来ないシミなどは、プロにお願いして柄足しを行うこともあります(年に一回あるかないかぐらいですが)
上手な柄足しであれば、柄を足したとはまず気づかないレベルに柄を足せますが、巷のお店では、突然脈絡もなくいきなり金彩の蝶が出現する柄足しをしたりするので、そういう着物の預かった時にビックリすることがあります。
なをし屋では、難しい柄足しはその道のプロの職人さんが全体のバランスを見て柄足ししてくださいますので、突然変な柄が足されることはありませんので、どうぞご安心ください。
今回は、私が柄修正を行いました。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 20,000円程度(税別)
(※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)