現在の着物にはほぼ使われていませんが、アンティーク着物の場合、裏地に真っ赤な色の生地が使われていることがよくあります。
この鮮やかな赤一色の裏地の生地は、「紅絹(もみ)」と呼ばれるもので、紅花で染めた生地となります。
アンティーク着物の裏地の紅絹は、濡れると色落ちしやすい
この紅絹という裏地ですが、水分に濡れると非常に色落ちがしやすい染色となっております。
例えば、着物に染みるぐらいに雨に濡れたら裏地から色移りしますし、たくさん汗をかいた場合も、裏地に付いた汗によって紅絹の染料が緩んで、着物の表地に色移りします。
この紅絹からの色移り、絶対に落とせないシミということではありませんが、比較的落ちにくいシミとなっておりますので、着物の色合いなどによってはすっきりと落とせないこともあります(色移りの染み抜きで、着物の地色も抜けてしまうため)
このアンティークのお着物は、汗をかかれて裏地の紅絹から表地に色移りしたものです。
画像を見ていただくとお分かりかと思うのですが、柄の部分に紅絹の赤い色が色移りしています。
周囲の紺色の部分にも色移りは起きているのですが、反対色(お互いに打ち消し合う色)の作用で、あまり分からない状態になっています。
色移りのシミは、地色を落とさずにシミを落とすのが基本
このような状態の物を染み抜きして色移りを落とす場合、柄の色抜けや周囲の着物の地色が抜けないように、コツコツと作業を繰り返す必要があります。
遠回りの道のりの方が、結果的に仕上がりが綺麗になる事例だと思います。
柄の色を消さないように、なおかつ周囲の着物の地色の紺色に悪影響を与えないように、時間をかけて染み抜きしました。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 15,000円程度(税別)
(※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)