振袖は、成人式や卒業式などで着ることが多い着物ですが、一般的に婚姻された女性は着ることがなくなる着物ですので、行事が終われば仕舞いっぱなしになってしまうことが多い着物でもあります。
着物は保管中にシミが濃くなることが多い
付いた時に見えなかったシミも、染み抜きで適切に処理しなかった場合、長い年月を経て濃い変色シミに変わります。
常々お話しておりますが、黄ばみ・変色シミは濃くなればなるほどに、限界まで染み抜きを行っても黄ばみが残りますので、染み抜き後の仕上がりも、元のシミの濃さによって変わってきます。
また、変色している部分の範囲が大きいと、シミを抜いて色が抜けた部分を色修正する際に、色ムラや違和感が残りやすくなります。
刺繍柄の振袖のお尻あたりの部分に、大きくて濃い変色シミが出ています。
ご依頼者様のお話をお聞きした限りでは、少なくとも二十年以上前に付いたシミが、保管中に濃い変色シミに変化したものと推測されます。
染み抜きと色修正はセットが基本
画像で分かりにくいと思うのですが、このお振袖は薄い水色の地色のお着物で、青系の地色のお着物の場合、変色シミの染み抜き作業で色が抜けてしまうので、しみ抜き後の色修正(染色補正)が必須となります。
残ったシミの黄ばみを消しつつ周囲の地色と合わせるように色修正を施すのですが、シミを抜く範囲が大きいほど、色が抜ける範囲も大きくなるので、色修正を施した跡の色ムラや違和感が出やすくなります。
目を近づけて見れば分かる程度の若干の色ムラや違和感は残りましたが、ご着用には全く支障のない状態に直すことが出来ました。
【参考価格】画像部分の染み抜き 20,000円程度(税別)
(※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)