当店は元来が染み抜き屋なので、染み抜きを承るのは日常的なことで当たり前のことなのですが、衣類を洗う専門店であるクリーニング店さんでも、近年は染み抜きを承るところがほとんどのようです。
とはいえ、そこは餅は餅屋という諺があるように、専門店でないことによるトラブルも少なくないようです。
クリーニング店で染み抜きを依頼して、染み抜きされていないことがある
今回ご相談いただいたお客様は、10年くらい前に着物に大きなシミが付いたので、全国的に有名なクリーニング店に着物クリーニングと染み抜きを依頼されたそうです。
綺麗にするのが仕事で、しかも全国的にも知名度があるクリーニング店に依頼されたので、シミも綺麗に落としてあると思われるのは当然のことだと思います。
実際、お預かりしたお着物には当時のクリーニング伝票が付いていました。
伝票には、手書きで「汚れ入念」と書いてあります。
大手のクリーニング店に依頼して、伝票にこのように書いてあったら、普通に染み抜きもしっかりしてあると信じますよね。
ところが、十年後にいざ着る時になって着物を出してきたら、シミのあった部分がとんでもないことになっていました。
一体、なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか?
受付と作業を行う人が別なので、依頼内容がきちんと伝わらない
それは、個人店以外の多くのクリーニング店は、受付をする人と実際に作業を行う人が全く別の担当者になるので、依頼内容が作業をする人にうまく伝わらないことが多いからです。
また、クリーニング店は洗うことに関してはプロですが、染み抜きに関しては集客や売上を上げるためのサービスの一つに過ぎないので、店によってその技術力にはかなりのばらつきがあります。
画像を見ていただくとすぐに分かりますが、訪問着の着物の後身頃に、大きな変色シミが出ています。
おそらくですが、付いた時は乾いてしまえば見た目にあまり分からないシミだったのが、保管中に何年も経過する間に、濃い変色シミに変化したものと考えられます。
このように濃いシミの場合、変色の色素を抜く染み抜きを繰り返し行う必要があるので、着物の地の色も抜けてしまうことがほとんどです。
染み抜きを繰り返すことによって、濃い変色シミは抜けましたが、着物の地色も抜けてしまったので、色修正(染色補正)で元の状態に戻す必要があります。
(染み抜き前と染み抜き後の画像だけを載せていると、「シミを抜かずに顔料でシミを隠している」とか難癖をつけるアホな困った同業者さんがいるので、染み抜き途中の画像も載せてみました)
かなり手間と時間はかかりましたが、大きな変色シミを跡形もなく消すことが出来ました。
【参考価格】画像部分の染み抜き 40,000円程度(税別)(その他の大きなシミも含めて、合計では80,000円ほどになりました)
(※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)