匂い袋(防虫香)で変色した紅型染めの帯
主に着物の保管中の防虫を目的として、匂い袋や防虫香の類をタンスの中などに入れる方がおられますが、着物お手入れ職人としては、あまり推奨出来ない防虫方法となります。
匂い袋の香料の成分は着物や帯を変色させる
匂い袋や防虫香には、白檀などの様々な香料が配合されており、その香料の成分が虫への忌避効果があるのですが、匂い袋などを着物などの保管場所に入れておくと、匂い袋から揮発した成分が何らかの化学反応を起こし、着物や帯などを変色させてしまうことがあります。
着物などに直接触れないようにしておけばそのリスクは下がるようですが、現代では匂い袋や防虫香を使わずとも、臭気のない防虫剤が市販されておりますので、防虫を目的とするのであれば、匂いを発する物を使う理由がないかと思います。
紅型染めの帯を保管している場所に防虫香を入れていたところ、このような黄色い変色が出ていたそうです。
これは、先にお話したように、防虫香に使われている香料の成分が揮発(きはつ)して保管場所に滞留した結果、何らかの化学反応を起こして帯の生地を黄色く変色させたものです。
このような匂い袋や防虫香で変色した場合、シミ抜きは可能なのですが、比較的強めの薬品や染み抜き方法を用いる必要があるので、染めや生地の関係で染み抜きが難しい場合もあります。
今回のこの帯は紅型染めだったのですが、本物の紅型染めは染料ではなく顔料で染められているため、安易に染み抜きを行うと柄が薄くなったりするので、そうならないように慎重に作業を行う必要があります。
時間と手間はかかりましたが、綺麗に落とせたかと思います。
【参考価格】画像部分の染み抜き 5,000円程度(税別)(その他全体に10箇所ほどあり、全体で30,000円ほど)
(※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)