スーツを誂えて、着物を誂える女性の気持ちがちょっと分かったかも?な話
先日の日曜日、生まれてはじめてオーダースーツというものを誂えに行ってまいりました。
お世話になったのは、京都ビスポークさんというテーラーです。(店舗外観の画像はサイトからお借りしました)
娘が来年卒業と入学を迎えるので、その際に着るビシッとしたスーツが必要だろう、ということで、52歳にして始めての未体験ゾーンへと足を踏み入れたというお話です(着物は何着か誂えた経験があります)
まずはお店に伺い、目があった店員さんに、(奥さんが)声をかけます。
「主人のスーツを作りたいのですが。来年の卒業式と入学式に合う物を、間に合うように作ってください」
奥さんがそう告げると、店員さんが「採寸などもありますので、二時間ほどかかります」と返答するや否や、モジモジしているボクを置き去りにして、奥さんは「じゃっ」と告げると、さっさと店を出て行きました(その後、娘と韓流グッズの店で推し活をしたそうです)
店員さん、イケメンの田中さんという方が担当してくださいましたが、田中さん、当たり前ですが、自店で誂えたオーダースーツでビシッと決めてらっしゃいます。
その点、着物を全く着ないくせに、お客さんに着物の魅力を鬱陶しいぐらいに語って高い着物を売りつける悪徳呉服小売店とは全然違いますね。
既製品のスーツを買うのではなく、オーダーでスーツ上下を作る場合は、まずは生地選びから始めなくてはなりません(この辺りは、着物を誂える場合も同じような過程ですね)
何しろ生まれてはじめてですから、他のテーラーさんがどうなのか分かりませんが、京都ビスポークさんでは、選ぶ生地のグレードによって、仕上がり時のスーツの値段が段階的に決まっているようです。
○万円~ というやつです。
ボクも決してお金持ちではありませんし、自営の職人ですから、スーツでなければならない場面以外には基本的に着ませんので、一番お安い生地で良いだろう…と、誂える前は考えていたのですが、そこはやはり、良いものは良い。
好みの色目、シュッとしているように見えて、フォーマル感があるもの、という感じの希望を伝えておすすめの生地をいくつか選んで見せてもらうと、これいいな…と直感的に気に入った生地のプライスタグを確認すると、やはりそれなりのお値段になります(笑)
かくして、初のオーダーでスーツ上下を作るという経験は、そこそこ良いお値段のスーツを誂えるということになりました。
スーツを誂えて、着物を誂える女性の気持ちが分かったかも?
今回お願いしたのは、仮縫いはないオーダースーツですが、スーツを誂える場合は、生地選びから始まり、裏地を選んで形を選んでボタンの色を選んで採寸して…という風に、あらゆるディテールを選択して、自分好みの一着を作り上げます。
異なる部分もありますが、一枚の生地から自分だけの物をオーダーで作り上げる、着物の誂えと共通する部分が多いなぁ、と。
特に、気に入った生地を選んで、採寸して仕立て上がってくるのを待つ間のワクワク感。
「あ、着物を購入した女性が、その着物を着て出かけるシーンを思い浮かべる時もこんな感じなんだろうな」と、ふと思いました。
(一部を除く)着物小売店に欠けている視点
全てではありませんが、一部を除いての着物小売店に欠けている視点があると思います。
それは、「着物であれ洋服であれ、着る人がそれを好きになってなおかつ最も似合う物を、店は売るべきである」ということ。
特に押し売りする悪徳呉服小売店は、お客さんのことなど一ミリも考えず、自分たちが売って売り上げになる物を売ろうとします。
だから、小物を買いに来たお客さんに反物を巻いて店から帰さないようにして、無理やり着物を買わせるという、商売人の風上にもおけないような悪行に手を染めるわけです。
衣服はあくまで着る人が主役。
着る人に一番似合って一番輝く物を提案出来ないような店は、いますぐ衣類を売るのをやめてしまえ。