着物の染み抜き技術で洋服も綺麗にします
ネットで「染み抜き」と検索すると、染み抜き屋とか染み抜き専門店を名乗るお店が多数出てきますが、ほぼ全てはクリーニング店が集客のために染み抜きをメニューにしているに過ぎません。
染み抜きの技術は、全ては着物のお手入れの技術から生まれたもので、着物の街、京都で生まれたその伝統技術の歴史は、始まりから約三百年経った現在も進化しながら脈々と受け継がれている、着物のお手入れや修復には絶対に欠かせない匠の技術です。
シミを落とすだけの汚れ落としと、染みを抜いて色修正する本当の染み抜き
染み抜きを謳うお店のほとんどがしていることは、本当の意味の染み抜きではなく、単にシミ(汚れ)を落とす汚れ落としであり、シミを落として色が抜けている跡を色修正(染色補正)で直す技術力は持ち合わせていません。
染み抜きは、色修正とセットが当たり前
クリーニング店に染み抜きに出して、このようなタグが付いて染み抜き不可で返却されたことはありませんか?
「これ以上処理しますと、生地を傷めたり、色があせたりするおそれがあります。」と書いてあります。
クリーニング店もプロですから、プロにこのように言われたら、変色した染みや染み抜きすると色が抜けてしまう染みは直せないのか、と信じてしまいますよね。
実際に、なをし屋には他店さんで「このシミは直りません」と言われて持ち込まれるお品物が多いのですが、そのようなお品物の大半は、きちんと染みを抜いて色修正を行えば、綺麗に直せるのです。
着物を制作する染料で色修正しています
この画像は、染色補正師 栗田裕史が、日常の染み抜き作業で使用している、着物が作られる際に使うものと同じ染料です(絹やウールなどを染めるのに最も適した、酸性染料という染料です)
これらの染料を混ぜ合わせ、修正部分を寸分の狂いもなく周囲と同じ色に合わせて元に戻す技術は、染色補正という国家資格もある職種が最も得意とする、長年の修業を経た者だけの特殊な技術です。
この染料の他にも、洋服の綿や麻を染めるのに使われる直接染料も使いますし、水洗いする衣類の場合には、通常の染料ではお洗濯で色修正した部分が再度色抜けした状態になってしまうので、水洗いしても色が落ちにくいように作られた特殊な樹脂の入った染料なども使いますし、革製品の染色には、革専用の顔料を使って色修正を行っています。
また、色修正の道具として、彩色用の筆、染料を細かい霧状に吹き付けることが出来るエアブラシ、染料をより生地にしっかり染めることが出来る刷毛などを、その用途に合わせて使い分けています。
これは、長年に渡り着物の染色補正とお手入れに携わってきた者にしか出来ない技術です。
シミと生地に適した薬品を使います
また、シミを抜く際の薬品も、着物のお手入れの伝統技術と最新の化学を組み合わせた独自の染み抜き技術で染み抜きいたしますので、染みの種類や生地と染色の種別を見定めてこのような多数の薬品の中から最適な組み合わせを導き出し、最適かつ最も生地と染色にダメージを与えない方法で染み抜きしています。
シミを抜くには強い薬品を使えば良いと思っている染み抜き店も多いようですが、強い薬品はシミに対しての効果は大きいのは確かですが、それは同時に生地へのダメージに繋がる危険性も持ち合わせています。
なをし屋では、長年の知見と経験で、最も効果的でなおかつリスクも少ない方法で染み抜きしております。
薬品を残留させないために専用の機械で洗浄
シミを抜いたあとの薬品の洗浄や汗などの水性のシミを抜くために、最新の洗浄機械を使っています。
この機械は、染み抜き専用に開発された機械で、水を霧状にして圧力をかけて噴射する機械です。
この染み抜き専用の機械で絶えず水を吹き付けて洗い流しながら、生地の下から特殊な吸引器で吸い込み続けることで、薬品などが残留しない、お手入れ後も安心して保管していただける状態に仕上げています。
昔ながらの方法を頑なに守っている職人は、染み抜きの薬品を使った後に、ブラシでトントンと叩いて下に敷いたタオルに汚れや薬品を移し取る方法で洗浄していますので、どうしても物理的に薬品などが残留してしまうリスクが高まってしまいます。
カーペットなどの洗濯出来ない物に、何かをこぼしてしまったことを思い出してください。
濡れたタオルなどで上からトントンとひたすらに叩いても、シミは薄くなっても完全には落ちないことが多いはずです。
染み抜きも同じで、いくら懸命に上からトントンとブラシに水を付けて叩き続けても、どうしても完全に除去するのは難しく、叩いて濡れた部分の範囲に残留した薬品が残ってしまいます。
当店は父の代から60年以上に渡って着物のお手入れに携わっておりますが、他の職人が染み抜きをした跡が、残留した薬品の影響で黄ばみになったり脱色したり、時には生地がボロボロに劣化している状態のお品物を預かったことは、数え切れないぐらいにあります。
先代の父は、そのような事故を起こさないように、常に最新の技術や理論を学ぶことに貪欲で、跡を継いだ私もその理念を受け継ぎ、常に最新の道具と理論を学ぶことを心がけております。
しみ抜き事例
ボールペンのインクのシミの染み抜き
ウーロン茶のシミの染み抜き
赤ワインのシミの染み抜き
汗のシミの染み抜き
浮き出た汗の塩分のシミの染み抜き
動画による染み抜き事例集
動画でご紹介しています。